サヨコ 今日のテ−マ「東京vs大阪」に基づいて質問その1。 さこちゃんは大阪出身だよね。

さこ 京都なんですけど……。

〜〜この段階で東京 VS 大阪のテ−マは崩れ落ちる〜〜

サヨコ (気を取り直して)京都のどこですか?

さこ 市内ですよ。えっと、真ん中。

サヨコ 北、南、東、西?

さこ どっちかというと南かな。

サヨコ 伏見稲荷とかあるところ?

さこ そうそう。まさに伏見なんですよ。生まれたのはそこらしい。親戚もみんなそっちらしい。

サヨコ それから大阪に移動したんだ。

さこ そうそう。神戸の学校に行きつつ……

サヨコ じゃ、もう三都またがって。

さこ (笑)そうそう、三都物語。
  サヨコ 三都の中で一番強く影響を受けたのはどこなのかな? さこちゃんもモノを 作ってるでしょ。向こうに帰ったりした時に「インスピレ−ションの源になってるな 〜」とか「この町ってすごく自分に影響を与えたなぁ〜」って感じたりするところは ?

さこ う〜ん。私の場合はあんまり大阪の町のどっかで遊んでた覚えもないし……。 たまたま一番多感な時っていうか中学校と高校が神戸だったから。神戸っていってもわりと山か海っていう感じでしょ。だから神戸の海とかすっごい思い出あるけど…… 。大学は大阪だったけど、あんまり大阪の町の中にいたわけではないんで。もちろん アメ村(アメリカ村:東京で言えば原宿のようなところ)とか行ったりもしましたけど。若い時だから。でも、どっちかというと東京来てからのほうがいろんな人に会ってるから……。

サヨコ そうなんだ。

さこ 大阪の友達は大阪の友達でこっちに来てもつながってますけど、仲のいい友達 もみんなこっちに来てるでしょ。母親もこっちに来てるでしょ。

サヨコ じゃあ、特にホ−ムグラウンドって感じじゃないんだ。

さこ そっ。だから特に思い入れがあるわけじゃなくて。わりと根無し草的な……。

サヨコ そうだよね。みんな多かれ少なかれ根無し草な感じをもって生きてる時代だ と思うけど。
さこ 「場所」ではすごい思い出があるかもしれないけど、「町」っていう感じではなくて。それだと旅先の方が「町」っていうので憶えちゃうでしょ。ちっちゃい時からずっと一か所で育っているわけじゃないから、あんまり思い入れがないのかも。

サヨコ ちっちゃい時から旅芸人のように。

さこ (笑)旅芸人のようにってことはないけど、引越しとかするじゃないですか。 サヨコさんはずっと同じ所にいるの?

サヨコ そうだね。旅行以外は育ったところはずっと同じだったから。

さこ だから思い入れがあるのかもしれないけど。こっちに来てから関西を振り返って、みたいな。関西弁で話してるから「関西人?」って言われるでしょ。で、こっちの人に「関西のここがいい」って言われると、「あっそういういいところにいたのか」みたいな感じはあるかな。

サヨコ こっちに来て例えば味が違うとか、人の歩く速さが違うとか、こっちの人は 行列作るとか、ない? 私も神奈川県の江ノ島っていうところに3年住んだんだけど、今さこちゃんが言ったように、離れてみて、自分の生まれ育ったところが改めて違うふうに見えてくるっていうのはあったかな。

さこ 着るものにしても作るものにしても色で言われるから……。今で言ったら最近の原宿の人達が着てるような格好とかも若い時してたんだけど、そういう色合いのものを着てると「あっ関西臭い!」って。

サヨコ 色があふれてる感じでしょ。

さこ でも今ってすごい中和されてるでしょ。あんまり意識しなくなったんですけど 。来てすぐの時はすごく感じましたね。
 
サヨコ 私もそれは感じてて。自分のバンドで大阪にツア−行くとだいたいアメリカ 村に行くでしょ。

さこ アメリカ村に行けばサヨコさんに会えるっていうイメ−ジがあったんですけど (笑)

サヨコ いやいや、そんなことはないけど(笑)。すごいアメリカ村って楽しくって。アメリカ村に行くたびに売ってるものが全然違う。で、当時、私のバンドでは「黒 」っていうのが基調になってて、お葬式みたいって言われてて。自分は黒以外のものは着ないって感じで夏も黒の長袖着て太陽光線集めてる感じだったんだけど(笑)。 大阪に行ったらものすごく派手な人たちがいて、例えば仕事関係の男の人なんかでも 、アロハみたいなシャツを着ててみんな肉付きがよくて……。

さこ それって15年ぐらい前の話ですよね。

サヨコ そうそう。よく行ってたころ。

さこ その後、Zeldaって結構色のついた服とか着てたでしょ。

サヨコ うんうん。大阪で色彩開眼したところがあって。

さこ そうなんですか。

サヨコ アメリカ村で、すごい赤い派手な、ジャニス・ジョプリンの『チ−プスリル』っていうアルバムカバ−がプリントしてあるTシャツを初めて買って。ジャマイカとかに行く前だったんだけど、エスニックな色合いの服を買ったりして。とにかく大 阪が私に色彩を教えてくれたって感じで。派手だなぁって思った。

さこ その頃ってギャルソン(=コム・デ・ギャルソン)の服とか流行ってた頃ですかね。黒い感じの。
サヨコ もうちょっと後だと思うけど。

さこ カラス族とか言われたりしてましたよね。

サヨコ
 うんうん。東京は象徴的な感じで、「黒、紺、白」って感じで無彩色なモノト−ンな世界の感じが流行ってたけど……。何と言っても私が大阪に驚いたのは食べ 物!

さこ おいしいんですか?

サヨコ いや、特別おいしい思いをしたことが正直言ってないんですけど。とらずし 《?》とか。

さこ それって何にびっくりしたの?

サヨコ ネタの大きさとか。回転寿司の発祥も大阪でしょ。

さこ えっ、発祥は名古屋じゃないんですか?

サヨコ 発祥は大阪だって聞いた。大阪の人が考えたって。

さこ 私が大阪にいたとき、東京の人に「さすがに大阪の回転寿司は安いけど、東京の回転寿司の方が江戸前寿司というだけあってネタはいい」って言われたんですよね。

サヨコ 東京の人に?

さこ そう。大阪は安さで売ってるけど自分はおいしい寿司を食べてるってことを言いたいのかも知らんけど。それを憶えてたから東京来たときに嬉しがって回転寿司に行ったらいきなり握りの中に虫が握られてて、すんごい悲しかったですけど。

サヨコ (大笑)
 

LUMPY HEARTS ( '97)
さこ 東京来てすぐの頃って3連発で。居酒屋の生ビ−ルの泡をガーッと飲んだらゴ キブリが浮いてたりとか(笑)。で、だしは大阪の方がいいと思うけどそばはおいしいって言われてそば屋に行って、まだ若かりし頃やからそばとかき揚げ丼頼んで、最後の一口のかき揚げ見たらゴキブリが一緒に揚がってたんですよ。

サヨコ うわっ、やめて! 

さこ 「これどーしてくれるんですか?」って言ったら「作り直しましょうか?」っ て。

サヨコ そんなこと言われたって……。

さこ もう食べられないでしょ、気持ち悪くて。東京来て最初の外食三連発それやったんですよ。絶対この町は私を呼んでないとそんときは思いましたけど。

サヨコ すごいね。虫のカルマ大爆発。

さこ 私、虫踏みつけて東京に来た?とか思ったりして。(笑)すいません、なんか話、脱線してます?

サヨコ いやいや。その虫を観察して作品にするとか?

さこ それはちょっと。……荒俣宏さんが集めてるような博物学の絵みたいなものは結構好きなんですけど、それを写真に変えられるとすごい気持ち悪くなるんですよ。

サヨコ 私がさこちゃんの個展を観に行った時に、虫の手足っていうよりも細胞とか微生物とか細かい世界っていうのを感じたけど。

さこ 触覚みたいな?

サヨコ うん。モノはバーンと大きくて色彩とか結構大胆なんだけど、形がすっごく繊細で。

さこ それはうれしいですね。イメ−ジで人物をひっくり返してみたらこんな感じっていうか……。
サヨコ ひっくり返して?

さこ これを説明すると、すごい気持ち悪いっていうか訳がわからないっていうか、 分かってもらえるかどうか……。

サヨコ どうぞどうぞ。続けて下さい。

さこ そのまんまの人を作ってもあんまり面白くないんで。しゃべっている時の一瞬の「あっ面白い」って言った時の顔って、その人は実は顔(皮)をかぶってるだけで 、それを取ったらって言ったら変な感じですけど、中の気持ちだけにしたらきっとこんな感じっていうのを……。

サヨコ ほっ〜(興奮)。すごい〜。すごいすごいですね。

さこ 雰囲気わかります? 楽しいって誰かが思ってるその時の肖像画だったり腕だけだったり走ってる足だけだったりとか。そういうのを組み合わせてる気分なんですよ。ちょっと変な人みたいですけど、ただ人の似顔絵を描くというよりかはイメ−ジ で浮かぶ形っていうか。

サヨコ 写実というよりもっと抽象的っていうか。

さこ 色でたとえたりするじゃないですか。そんな感じでもっと気持ちを具体化したら面白いかなぁって思い始めて。へそ曲がりなのかもしれないけど(笑)。そのまん ま写実で描いたら赤い服着せないと赤が出せないけど、ひっくり返したら血管とかも ……別にグロテスクな意味で言ってるんじゃないんですよ。何て言うのかな、今生きてるのは体は借りてるっていう感じの姿じゃないですか。無くなったら魂がどこに行くとか、そんな複雑なことを思ってるわけじゃないんですけど、まぁそういう感じで 、取っちゃえば中身はみんな似たようなもんで、喜んでいるときはこんな形だったり 、腹が立ってたらこんな形っていうような。こっちに来てから作り始めたのは……色んな人に会いたいでしょ。影響も受けたいし。だから自分の肖像画みたいなつもりで 、触覚を伸ばしてるようなものがすごく多い。それが爬虫類系の舌だったり珊瑚礁が生えてるようであったりとか。柔らかい形になるから海モノですか山モノですかって いうふうに聞かれたりとか。

サヨコ (笑)

LUMPY HEARTS ( '97)

終わりと始まりの間で眠る場所(’95)
さこ それって要するに生き物って感じてくれてるからやと思うけど……。食虫植物のようとか、色が派手だからそういうふうに言われるのかもしれないし。ウミウシみたいとか。

サヨコ あ〜、そうだね。

さこ それまでウミウシすら知らなかったんですけど(笑)、そうやって見てみると 「ウミウシってこんなに色がいるのか」とか思って。そうやって言われるのはわかるなぁとは思ったんですけど。

サヨコ 原種っぽい。進化する前の原種っぽくも見えるときもあるしね。

さこ 気持ちの中では、原種っていうかその人の肖像のつもりだから。

サヨコ なるほど。

さこ そういう感じに見えてくれると嬉しいんですけど。意外と色合いがあるから、 先にそっちが入ってきちゃった人には「かわいい」って言われたりとか。

サヨコ でもかわいいって言われるのって結構よくない?

さこ でも子供は意外と怖がるんですよね。気持ち悪いって言われたりとか泣き出しちゃう子もいたりとか。もちろん遊ぶ子もいるけど。結構大人の方が嬉しがって、近寄ってきたりとかしゃがみこんだり寝転んだり。歌うたいながら帰る人とか。

サヨコ 大人が子供みたいになっちゃうってことなんじゃない? 素直になれるというか、インスピレ−ションが湧くっていうか。

さこ そうだといいんですけど。リラックスする人はすごいいいみたいですけど、駄目な人は「うわ」って言って去って行かれますね(笑)。感想持たれるほうがいいので、それもそれと思うけど。

サヨコ そうだね。いろんな反応があったほうがね。私も詞を書くということで、最近はそうでもないけど昔はそういうのがあって。埋め立て地に行った時に、埋め立て地が物語のすべてが始まる開拓地、原野に見えたり、全てが終わっちゃって廃虚にな ってしまった場所に見えたり、クレ−ンが赤いキリンに見えたり、高速道路で追ってくる車のライトを目を細めて見てると天につながってる精霊に見えたり……。物なんだけど何か宿ってる、宿って私達を追跡してるような、そういう感じ。そのものをそのまま受け取るんじゃなくて、そこに想像力を膨らませたり、さこちゃんみたいに裸にしてみたり、もうちょっと“生”っていうか原種として見たりとか。言葉なんかも そのまま使うんじゃなくて、いっぱい、形容詞−−形容詞を私は色って呼んでいたん だけど、形容詞を色彩としていろんな色彩を使って一つのものに……。例えばコップっていうのに、“きれいなコップ”“きれいな赤いコップ”“きれいで古くて赤いコ ップ”とか形容詞をばんばんつけて、ただのコップじゃなくしてしまうって感じ。
さこ そうやって作ってるんだ。

サヨコ だから今の話はよくわかる。

さこ 私がサヨコさんの大ファンだったのはまさに……

サヨコ だったんですか(笑)?

さこ だってこうやって話すことがあるとは思わないじゃないですか。高校生の時ですけど、人に今考えてるようなことをね、今サヨコさんはわかるって言ってくれるけ ど、誰も意味がわかってくれないっていうか。変わった人扱いされても、別に変わっ た人でありたいから言ってるんじゃなくって、そういう見方も面白いよねって話をしても、なかなか理解してもらえなくて。で、そんときに Zeldaの歌に出会って、「うめたて」とか「セイレ−ン」とか聴いて、同じようなことを考えて日本語で歌にしてちゃんとレコ−ド出してる人がいるんやわと思って、すんごい Zeldaファンになっちゃたんですけど。

〜〜このあと約10分間、さこちゃんが Zeldaファンとしての歴史を語る〜〜

サヨコ 自分が表現した時に、今言ってくれたように沢山の人が同感したり、それを感じたりする人からの反応があったからものすごく嬉しかった。

さこ 言葉は変わってるけど情景をすごくわかりやすく説明しているようにも感じるし。

サヨコ ありがとうございます(笑)

さこ ちょうどその頃、夜中じゅう高速道路の下を歩きまわったりしていて、置き去りにされてる車とか倒されてるごみ箱とかを見つけては写真撮ったりとか。何をしてるわけじゃないんですけど高校生なのでよく補導されてましたよ(笑)。誰もいなくなったオフィス街とか車が通らなくなった道とか、御堂筋とかで大の字になって寝転んだりとか……。でもわかってもらえないんですよね、友達には(笑)

サヨコ (笑)私も埋め立て地とか行ってたときによく出会ったのは、暴走族か釣り人。

さこ そうそう。こっちはたそがれていたいのに。

うらがえし POWDER ROOM ( '95)

LUMPY HEARTS ( '97)
サヨコ こっちは暴走したいわけじゃないし、釣りをしたいわけでもない。心をさまよわせたいっていうかそういうものを求めて行ってるんだけど。わかってもらえなかった?

さこ ひとりで入り込んでる危ない人みたいな感じやって。

サヨコ 人恋しいんだけど人気のないところに行きたいっていうのがすごくあった。

さこ ただ黙ってぼ〜っと座っていたいとか。

サヨコ そうそう。それが本当だったら山とか川とか海岸とか、そういう場所なんだろうけど、都会でそういう大自然みたいなところって皆無でしょ。だから夜の人がいない港町とかオフィス街とか高速道路の下とか地下通路とかそういうのを求めちゃって。

さこ だからサヨコさんの“コンクリ−トジャングル”とかいう言葉に異常に過敏に反応して、まさにそのとおりと思って。生まれたのが大自然の中で、どっち向いてものどかに暮らせるようなところだったら、きっと今みたいなものは作ってないし。直 接に生のお花があればそれでいいのかもしれないけど、それじゃなんか寂しいってい うか合わなすぎと思って。自分なりの居心地のいい場所とか物を作りたくって、作っていくとやっぱそれに負けないような色合いになってきただけで。だから私が作ったものって確かに町の中とかで置きたいけど、すっごい古い日本家屋の床の間とかに置いたりしてる。

サヨコ さこちゃんの作品 in 床の間って、すごいね(笑)

さこ あとは、めちゃくちゃあくせくした証券会社の絶対誰も立ち止まらないような入り口に置いてたりとか。私の作品は水はやらなくていいし、花よりいいよっていう 。でも生き物がいるって感じで。

サヨコ 見える人にとっては見える。

さこ そうそう。たまに立ち止まって、作品の一部が急に自分の一部に見えたりしてくれたりしたらいいなぁってところから始まってるから。「植物のようですね」とか言われても嬉しいですけど、植物と並べて置いたりはしたくないかな。
サヨコ わかる。要するにその人の表現してることって、生きてきたミックスの具合っていうか、それがそのまま出ると思うのね。昔はさ、そんなに人が移動しなかったから、育った場所とかものすごく強くあったし、そのカラ−自体がそんなに沢山なかったし雑多な感じじゃなかったと思うんだけど、今ってものすごい勢いで人が移動しているでしょ。だからアイスクリ−ムでいうような色んなフレ−バ−があって、その 人の移動してきた、経験してきた、会ってきた、見てきた、感じてきた、触ってきたものとかがすごいミックスされて、ブレンドされて出てると思うから、なんでもありなんだと思うの。そこが面白いなと思う。

さこ そのフレ−バ−具合が好みに合えば、それをチョイスすればいいやんか。それが選べる時代っていうか、すごい面白いけど流されないで自分のラインを決めとけば楽しいと思うし。

サヨコ ひょっとしたら生きてる人間の数の分だけ表現があるっていうか、歌があるっていうか、そのぐらい多彩な時代だなぁと思った。

さこ 表現って、生きてる限り生きてること自体が表現だから。ただそれがうまく伝えられなくて、どっかで借りてきたみたいになっちゃったりする時もあるでしょ。

サヨコ それはそうだね。表現自体はみんな持ってるけど、表現の仕方、表出の仕方でそこが分かれてくるよね。

さこ サヨコさんの表現や歌で私が反応したみたいに、私の表現に誰かが反応してくれることがあれば嬉しいけど。それだけとは言わないけど、サヨコさんの歌があったから今の私の一部があるのは確実で、「あ〜別に結構変なこと言ってるわけじゃないよね」って思った。それは曲げられない事実。

サヨコ 私だけじゃないのねっていうのはあるよね。

さこ 物を作り始めた時も「誰々の作品に似てますね」ってよく言われたりしたけど 、同じようなことを考えてる人がいてもおかしくないし、でも出してるのは私のテイ ストと思いながらやってた。東京に来てすぐに……話戻りますけど、「関西人やから」ってひっくるめられると、そう見えるんだったらしょうがないけど、こっちに来て人に会って色々思ってるからこうなるっていうのは、自分にしか作れないフレ−バ−だと思うし。

サヨコ そうだね。でもね、そういうふうに思う一方で、逃れられないっていうか血筋として染み込んでる自分の町、感覚ってあるんだなって最近は思う。色んなところに旅したりとかそういうことでフレ−バ−、ブレンド、ミックスっていうキ−ワ−ド はあるんだけど、一方で逃れられないホ−ムタウン感覚っていうのがあって。ホ−ム ボ−イとかホ−ムガ−ルっていうでしょ。東京に対するそこまでの愛着って今はないんだけど。最初に旅で島に遊びに行ったときも、どうやって過ごしてふるまっていいかわかんないわけ。ビ−チで時計も外して何にも無い所で寝そべってリラックスしてるということに全く慣れてなかったから、どう時間を使っていいかわかんないし、自 分の存在をどこに置いたらいいかわかんなくて。今までやってきた暮らしてきたフィ −リングとは全然違うんだなぁって感じたし。初めて京都に修学旅行で行った時も、 子供が京都弁しゃべってるだけでものすごい胸がときめいちゃって、なんて不思議に所に来ちゃったんだろうって思った。大阪も1人でぶらっとお茶のんだり、ご飯食べ たり、人と話すだけですっごく胸がときめくっていうのかな、新しいものに出会うよ うな神秘的なものに触れるようなワクワク感があって。

PARASITE ( '96)
  さこ 東京の友達がね、大阪に来ると小さい子までが大阪弁しゃべってるのを気持ち悪いって。でも私が初めて東京に来た時は、みんなドラマの言葉をしゃべってるみたいだった。小学生も生意気しゃべってるように最初は感じて。

サヨコ 私は関西人は漫才してるように見えたな(笑)。こっちはドラマなんだ。

さこ 関西人ってわりと標準語を毛嫌いしてるじゃないですか。大学の時に東京から来てる人達の中で大阪弁なんかうつりたくないと言ってる人達がいて、「うわっ、すかしてる」みたいな感じだった。私もまさか普通に標準語が話せるようになるとは来た当時は思わなかった(笑)。東京の大学に来た時に、クラスの半分は留学生で、その人達は標準語を習ってるわけでしょ。でも私は関西弁なんで、私と話してると先生に怒られる〜ってその人達に言われた(笑)

サヨコ え〜。アクセントがついてるから?

さこ そうそう。アクセントが狂ってるって言われるから標準語でしゃべってって言われたりとかして。だから私も一緒になって標準語を練習してたから、私も留学生?みたいな(笑)。それまで全然違和感を感じてなかったけど、初めて……

サヨコ 離れてわかったんだ。なんか大阪弁って跳躍力があるっていうかジャンプ力がすごいあるわけ。「ぱんぱんぱん」って跳ねるっていうか。それで大阪って昔から ファンキーとかダンサブルとかって言われたり、そういうカルチャーが人気があったりすると思うんだけど。こっちから見るとすごいその跳躍力が驚異的にみえるし、言葉−−言葉って大阪弁に限らず最初に入ってこない?旅に行って一番最初に入って こない? 食べ物とか匂いとかあるんだけど、言葉って一番ダイレクトで。ジャマイ カ行った時もジャマイカのパトアの跳躍力に驚いたし、喧嘩してんのかなって思ったし。音っていうことで反応してしまうのかもしれないけど。だから大阪の町に行って言葉を聞くと、自分と違うものをここの町の人達は持ってるんだってことでときめいちゃうっていうのかな。

さこ 今こうして話してるうちに確かに文化の違いを一個感じました。あの、「ボケ たら突っ込んでくれよ」って(笑)。それだけはすごく悲しかったかな。

サヨコ (笑)それそれ!さっきから言おうとしてたの。ごめんごめん。ボケとツッコミ。そう!それが一番違う。みんな笑いをとろうとするでしょ。笑いをとる感覚が私にはわからなくて。笑うということでお互いのコミュニケ−ションをとるっていうことがあんまり無かったの。どっちかというとものすごい無表情、無反応みたいな感じだったから、関西人と話してそれを要求されるようになって会話の中で自然に……

さこ (笑)当然のように役割で親、兄弟、友達全部に普及してるから。みんながみんなって言ったら怒られると思うんですけど。
サヨコ うん。やがて私はその中では「ボケ」のほうに入るんだってことがわかって。

さこ (笑)

サヨコ その面白さを徐々に関西の人から教えてもらうって感じはある。

さこ 自分はボケの中に入るんだっていう意識が目覚めたってことは、今までは突っ込まれなくてもそれで過ごしてきたのに、関西の人に突っ込まれると腹が立つんですか?

サヨコ そう。だからわからないわけ。笑いに通じる道があるっていうことがわからないから、突っ込まれると全部本気で受け取って、なんでそんな大袈裟なことを、とか。

さこ いじめるんだろうとか。

サヨコ 断定的なこととかひどいこと言うんだろうと思ってた。それが笑いよりも怒りとかコンプレックスのほうにコンセントが入っちゃったりとかして。シリアス、いい意味で言えばシリアス。

さこ わかる。私もたまについちゃうから、すごくわかりますね。

サヨコ ううん。それを笑い飛ばすってところでコンセントをつなげれば面白くいくんだっていうのがわかんなかったんだね。それが一番の西と東の違いかな。東京もね 、山の手のほうって東京であって東京じゃないから。色んな人が来てるから。東のほうの下町に行けば「べらんめぇ」とか「てやんでぇ」とかあると思うんだけど。

さこ 下町の人とは結構通じるんですよね。

サヨコ だと思う。

さこ 私のアトリエが下町なんですけど、そこまで言ったらまずいでしょっていうようなことを……

サヨコ ズバって言うね。

さこ そうそう。

サヨコ 東京でもそういう文化が全くないわけじゃなくて、下町文化っていうのは大阪のダウンタウンの部分とすごい結びつくと思うけど。どっちかというと東京ってみんなカルチャ−の最先端とかインテリみたいな、冷たいとかすかしてるとかそうい う……

さこ 真面目に返さないとマズい、みたいなところがあるよね。

サヨコ そうそう。あんまり笑いとったりえげつないこと言うと知性がないような感 じで……。

〜〜以下、延々続く。さこちゃんの漫才も始まり、言葉談義で盛り上がる〜〜
 

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