サヨコ ケイコちゃんと初めて会ったのは、去年の9月のバリ島旅行でだよね。

野村 そうですね。私とちほさん(ZELDAのメンバ−)の取材の仕事で、何故かサヨコさんも同行することになって、バリ島待ち合わせで初めて会ったんですよね。 サヨコさんはバリは2回目?

サヨコ そうです。一番最初に行った海外旅行がバリで、今回2回目で15年ぶりぐらいで。最初に一緒に行った相手がちほさんだったんで、私は非常に懐かしくて。

野村 へぇ〜。15年ぶりのバリはかなり変わってましたか?

サヨコ とっても変わってましたよ。前に行ったときは、ウブドという芸術家が住む村があったんだけど。

野村 今回も行きましたよね。今回は首都のクタとウブド、ヌサドゥワに行ったんですよね。
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Photo by Keiko Nomura
サヨコ そうそう。ウブドはほんとに15年前は"村"、"芸術家の住む村"って感じで 、美術館の周りにも数件のレストランしかないって感じのところだったのね。だけど 今回行ったら、"村"っていうよりも"小さい町"っていう感じになっていて、すんごい勢いで発展してるから、まずその勢いに驚きましたね。ケイコちゃんは初めてなんだよね、バリ。

野村 そう。アジア旅行はもう20回以上行ってるんだけどバリは初めて。でもバ リはすごくよかったですね。

サヨコ 何がよかった?

野村 もっと観光ずれしてる島かなって思ってたんだけど、全然のんびりしてるし。 発展してるといってもまだ自然もいっぱい残っているし、海もすんごいきれいだ し。 ライスガ−デンとか、きれいだしね。音楽とかダンスも、観光客のためだけにホテルとかでやってるのかなぁって思ってたんだけど、わりと自然な形で生活の中でもやってるのが見られて。サヨコさんもガムランで飛び入りで参加してましたよね。

サヨコ えっ、してたっけ? どこで(笑)?

野村 レストランでやってましたよ。
サヨコ あぁ! ジャワレストランでね。ジャワの宮廷音楽をやってるジャワの王ご用達のスタイルのレストランにガムラン楽団がいて、一緒に叩いたりしたよね。 ああいう気易さが外国だなって感じがするんだよね。あれが近所のお祭りとかだったら、 私の場合、ちょっと恥ずかしくなっちゃうんだけど、町の外に出ると急に無遠慮になるっていうか(笑)、パッと参加できる気易さがあるのね。ケイコちゃんなんかは、例えば写真とか撮ってて、撮る対象が決まってる場合もあるけど、自分がいいなぁって、撮りたいって思った対象が人間だったときに、向こうも何かしていてってい うタ イミングがあるでしょ。そこの場所に混じるっていうか……。今回一緒にバリを 歩いてて、ケイコちゃんってすごいタイミングがいいって思った。寺院なんかで参拝した人たちがバーッと出てくるときに、全然気後れしないでその人たちをタイミングよく気持ちよく撮って行くさまが、ほんと、すごいなぁって。

野村 タイミングよく撮るっていうのが一番。物怖じしないっていうか。おどおどしたり、ちょっと躊躇すると、その空気感が伝わってタイミングが悪くなるからね 。

サヨコ そうそう、そうだね。

野村 あぁいいなぁって思ったときの勢いそのままで"サクサク"といくと、わりといいんだよね。何事も躊躇することでタイミングのズレを起こしてしまうから。で も写真を始めた頃は、町で人に「撮らせてください」って声かけたりして、よく断られた (笑)
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photo サヨコ 躊躇しないで言ったのに?

野村 いやいや、躊躇してたから。自信がなかったから。なんでこの人を撮りたいんだろうって考えちゃったり、よく撮れる自信もなかったから、「すいません、撮っていいですか?」って。おどおどしてるのが伝わると、「何で!」って断られるんだよね。 最近はあんまり断られないけど。

サヨコ それはもう、「あっいいな。この風景を、この人を撮りたい」って思った時にパッと行ける思い切りのよさだよね。

野村 旅に出るとか人とのつきあいとか、何事もその場の思いつきで直感で動くとうまくいくけど、ちょっと躊躇したりするとうまくいかなかったりして、「あぁ!タ イミング逃してしまった!」って感じになるんだよね。

サヨコ そうだね。私もガムラン楽団に入って演奏したときとか、やっぱりちょっと勇気いるもんね。勝手に入っておじさん怒ったりしないかなぁとか、その場の輪 、ハ−モニ−を乱すんじゃないかとか。そういうふうに躊躇してると駄目だけど、聞こえてきた音がすごくきれいで、「あぁこの中に自分も混じりたい」っていう素直な気持ちで行くと、みんなもニコニコって笑って、一緒にやらない?って感じの雰囲気になってくるからね。旅してると、私の場合だと"音"なんだけど、普段以上に聞こえてくる音にすごく敏感になるっていうのはあるかもしれない。普段歩いてる町の音は聞き慣れてるけど、旅してると何もかも新鮮だから、目に飛び込んでくるものとか聞こえてくる音にすごく反応して、自分も素直に向かっていける、自分が研ぎ澄まされていくのを感じたりするね。

野村 それは、写真撮るのも同じでね。

サヨコ 自分の町で撮ったりとかある?
野村 基本的にあまり普段カメラを持ち歩かないからな。なるべく特別なとき、 旅に出るときとかのように研ぎ澄まされてないと何も見えてこないから。普段も撮りたいなぁとは思うけど、やっぱりカメラを持ってるときだけ敏感にアンテナ張ってる 状態で、気になったものをパパパッと撮って。集中力がないとできないからね。

サヨコ でもね、撮りたいなぁって風景があったときにカメラがなかったらどうするの?

野村 ただ見てる。

サヨコ (笑)あぁ、感じてるんだ。

野村 タイプによるみたい。いつもカメラ持ち歩いてるカメラマンもいるし。私持ってないでしょ。信じられないって言われたりするよ。温泉旅行とか行くときにもカメ ラ持って行かないんだけど、旅行に行くのに写真家がカメラ持ってこないなんてって周りの人に言われる。けど「なんで!」みたいな。

サヨコ ただ感じてるっていうのもいいかもね。

野村 そのときにいいなぁって思ったことがまた違うときに出てくるような気がするから、あえて普段から必死にガツガツ撮らなくていいかなぁって思ってる。バリは色がスカーンと抜けていて、色があふれてて、人の表情も柔らかいし、すごい恵まれた土地だなって感じた。ずっと沖縄に行ってるんだけど、同じ南国でも沖縄は色が淀んでいるような・・・
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Photo by Keiko Nomura
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 Photo by Keiko Nomura
サヨコ すごくみんなさ、信じられないぐらい優しい目をしてて、信じられないぐらいよく笑うから、あの明るさには圧倒されたね。

野村 岬に行っても、波の立ち方がきれいにストライプを描くように流れるように見えるし、ライスガ−デンとかもきれいだし。バリの人の美意識をすごく感じたね 。

サヨコ そうだね。珍しいところだよね。同じヒンドゥー教でもインドとかはバイタ リティー、生命力がないと絶対にサバイバルできないような、なんかすごい強いものを要求されるんだけど−−もちろん癒される部分もあるけど、やっぱりガツガツいかないと取り残されたりしちゃう雰囲気があって−−バリはそういうものよりももっとすごく穏やかで静かで、でもやっぱりアジア特有のねちっこい感じがどっかにあって、それが妙に気持ちいいんだよね。

野村 ほんと気持ちよかったね。温泉もね。

サヨコ そうだ。温泉があって食べ物がおいしくて……

野村 景色がきれいで……

サヨコ 音楽がいい!っていう。

野村
 踊りみて《?》。
サヨコ 素晴らしいよね。バリはイベント好きみたいで、至るところで毎晩どっかで お祭りとかやってるじゃない。私がケイコちゃんと合流する前も、近くのお寺で 2日がかりで夜通しお祭りをやってたりとかして。で、そこで寸劇があったり踊りが あったりガムランの演奏があったりとか、たくさんのフル−ツやお米でおみこしみたいな形を作って神に捧げてたりとか、そういうみるもの《?》がものすごく細かい。 バリの絵なんか見てもそうじゃない?手先の器用な感じのすごく細密な世界で、一度あの中に入り込んじゃうと、いろんな楽しみ方ができるっていうか。

野村
 ちほさんが言ってたんだけど、バリには芸術、ア−トっていう特別な言葉が存在しないんだって。それがなんとなく理解できるっていうか。生活とか習慣の中に自然とア−ト的な物が溶け込んでて、当たり前なのにあえてハイア−トみたいな感じにいう必要もないのかなって思った。

サヨコ 信仰もそうだよね。特別なものじゃなくて、ほんとに自然に毎朝毎晩神様と交流してるって感じがすごくする。今の日本は神様と出会うこととか誰かがクリエイトしているものに出会うことがちょっと特別な感じに区切られてるっていうか。 そんな感じの日本に生きてるから、うらやましいなぁって。

野村 バリだと空とか海とか寺院とかそういうものから感じることっていうのがいっぱいあるんだけど、日本で都会暮らししてると、例えば踊りを観るとかきれいなものを観るとか、商業ベ−スなものにガチガチに固められた中でしか感じられないから、 バリのように芸能とか文化とかを日常生活の中で感じられるのは……

サヨコ野村 すごいよね!
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 Photo by Keiko Nomura
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 Photo by Keiko Nomura
サヨコ 日本もきっと田舎に行くと、そういうものを持ってるちっちゃい村とかそういうふうに生活してる人たちもたくさんいるんだろうけど、東京にいるとそういうものも全部最初に情報みたいな形で入ってくるから、まず会場に行って楽しむみたいな 。しかも会場に行くには自分の家から歩いて行けるような距離じゃないから、電車に乗って時間に間に合うようにみたいにくぎられた感じがあるからね。バリみたいに、近所でお祭りやってるような感じでヘラヘラヘラっといって夜通し楽しめるっていうのはうらやましいなぁって思う。

野村 日本でもね、田舎のほうに行ったら、宴会の席じゃ、おじいちゃんもおばあちゃんも踊ってますみたいな。

サヨコ それが一番ダイレクトなのは沖縄だよね。

野村 沖縄はね、ほんとみんな踊るよね。酔っ払うと三線を引っぱり出してくる人が絶対一人や二人はいるしね。

サヨコ すんごく自然にね(笑)。沖縄に初めて行ったとき、すごくバリに似てるな ぁって思って。シ−サ−とバロンの感じも似てるし、女の人なんかも顔立ちとか服装のセンスとかすごく近いなぁと思って。インドネシア人みたいな人いない?沖縄に。

野村 宗教的にも似てるかも。もともとバリもヒンドゥ−教とアニミズムでしょ 。沖縄もアニミズムでしょ。自然崇拝が基本でしょ。海の神様。石の神様……

サヨコ そうそう。神様が沢山いるね。あったかいところはそういうふうになりやすいんだね。
野村 あったかいところって豊かだからね。海からの恵みとか、太陽の恵みとか 。

サヨコ バリで音楽的に不思議だったのは、シンガ−がほとんどいないってこと 。インドネシアに行くと素晴らしいシンガ−がいっぱいいるんだけど、どこの国にもあるような、バリの中の大衆ポッブスみたいなものがものがないんだよね。島のヒット曲とかを耳にしたことがないのね。地元の人に聞いたらバリでは大衆歌謡歌手みたいな人がいないんだって。日本でいったら美空ひばり、インドネシアだったらエルフ ィ−・スカエシみたいな大歌手ね。あれだけ音楽がすんごく愛されて自然が豊かなのに、そういうのがないっていうのが面白いっていうか、なんでだろうって感じ。さっきケイコちゃんがいったようにア−ト的なものが特別じゃないってことなんだね。

野村
 大衆ポップスとかってある種商品化されたものだからね。バリで一番気に入ったのは、首都のクタとかはバンコクとあまり変わらないって言うか。

サヨコ ゴチャゴチャしてたね。

野村 うんうん。ヌサドゥアとかウブドゥとかは、あれほど日本人の観光客があふれていてみんな日本語しゃべってるのに、俗っぽさをそれほど感じなくていいなぁって。バリには大衆の生活とか文化だとか宗教の中とかから溢れ出てくるものがまだとめどなくあって、それを旅をしてる私たちも一緒見られるっていうのが感じられる 。

サヨコそうだよね。なんかかわいいよね!だいたい私が行った南の島、沖縄とか ジャマイカはたいていかわいい! ラブリ−って感じるんだけど。ほんとバリはかわいい!
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 Photo by Keiko Nomura
野村それであんだけお土産が激しくなっちゃうんですね(笑)

サヨコ モノとかもそうだけど。そこにいる人たちとか……

野村 男の子がかわいいとか(笑)?

サヨコ (笑)そうだね。男の子もかわいいし。おばあちゃんもかわいいし。

野村 何見てもかわいい。お寺もかわいい、料理のもりかたもかわいいし……

サヨコ そうそう(笑)

野村 全部持って帰りたーいって感じなんでしょ。

サヨコ そうそうそう。いっそのことここに引っ越しちゃえ!みたいな気持ちなっちゃうぐらいかわいらしさに溢れてる島だなぁって思って。

野村 ちょっと今年はバリバリはたらいてまたバリにいこうかな〜。

サヨコ バリバリね(笑)

野村 また行きましょう!

サヨコ 行きたいですね!

1999.4.7
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